ポマンダーの芳香
ポマンダーの芳香
夏の暑さが和らいだとたん、日が暮れるのが本当に早くなりましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか?
コロナも長期化する中、季節の変わり目こそ、免疫力と朗らかな気持ちをキープしたいもの。
そこで、今回は中世から病気予防や魔除けとして使われてきた、ポマンダーのお話です。
ポマンダーの名はフランスのpomme d’ambre(琥珀のリンゴ)から来ています。
フランス語で「灰色の琥珀」という意味のアンバーグリス(龍涎香)やムスクなどの香料を丸めたものや、それらを入れて持ち歩く金属製の容器がポマンダーと呼ばれました。
日本の茶の湯に使われるお香の容器「香合(こうごう)」も、四季折々の意匠がこらされた工芸美を誇っていますが、ポマンダーの容器も緻密なデザインがほどこされました。 美しくデザインされたポマンダーは、カトリックの祈祷に使われるロザリオや、ベルトなどのパーツとして、装いの一部となりました。
中世から近世は、伝染病が広まると瞬く間に大勢の命が奪われた時代です。
ポマンダーを身に着けるのは単なるファッションではなく、その芳香には命を守る切実な願いが託されていました。「ノストラダムスの大予言」で知られるノストラダムスは医師でもあり、16世紀フランスのペスト大流行の際、熱心にペスト治療にあたったそうです。 ノストラダムス自身、最初の妻と2人の子供たちをペストで亡くしたという説もあります。
そのノストラダムスが処方したポマンダーの一種、「薔薇薬」は、ジャコウジカの分泌物に一晩浸したバラを乾かしすりつぶした後、安息香、アンバーグリス、シベット(ジャコウネコの分泌物)と混ぜ、花びらで挟んで乾燥させ…と、様々な香料を駆使して作られました。 現代人からするとなんとも怪しげですが、世界一素晴らしい香りで、芳香も長持ちしたとか。
現在主流となっているポマンダーは
オレンジやリンゴにクローブ(丁子)を刺し、シナモンをまぶして乾燥させる「フルーツ・ポマンダー」。 ノストラダムスのポマンダーと違って、身近な材料で手軽に作ることができます。 クローブを折らないように気をつけながら、ひとつひとつ丁寧に刺していくと、オレンジの芳香とクローブのエキゾチックな香りが混ざりあい、癒しとともに清められていくような感覚を味わえます。
フルーツポマンダーはクリスマス時期の装飾に使われることが多いものの、しっかり乾燥させたものは何年も楽しめ、ワードローブの芳香剤にもなります。 秋のお家時間の過ごし方として、ポマンダーを作りながら冬支度をするのも良いかもしれませんね。
文 御木里空
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